本研究は機械学習により考古資料の分類を可能とするモデル開発を目指すものであり、従前の機械学習が一つの対象から一つの回答を導く単線的なモデルが主であったのに対し、 複数の要素をもとに複数の回答を得られるモデル(マルチヘッド・マルチタスクモデルと呼称)を用いるのが特色である。
前年度までの成果をもとに、日本情報考古学会第46回大会(令和4年3月26日)において発表を行った。ここでは正解によっては高い再現率を示すものがあるいっぽう(型式:Ⅱ-5;1.00,年代:後葉;0.83)、ばらつきが多いもの(型式:Ⅱ-1・2,年代:前葉)があることが示された。
正答率と再現率が高いものがあるいっぽうで低いものがある背景には、
① 特に古相の資料が依然として少ないことと、
② 変化は漸移的であるため、別個の分類に属すると判断するには難しいものが含まれざるをえないこと、
③ 加えて用いた資料が近畿地方を中心としながらも複数の広範な地域出土のものを含めたことにより、地域差や工人差が作用した可能性があること、
が挙げられる。
解決策として、まず今後データ数を増やすことが必要である。課題①③については、中心的な窯場である陶邑古窯跡群の資料のデータを取得できるよう、調整を進めている。データの取得は可能であれば9月末までには目途を付けたい。
課題②については分類の見直しも検討する。すなわち中村分類に加えて、より独自の視点を加味した分類案での試行も検討する。
またデータの精度の観点からは3Dデータの解像度を64x64x64から128x128x128に上げるほか,形態に限らず法量などの年代に関わる情報も追加して検討することが求められよう。
そのほか、海外誌への投稿を目指すが、成果の取りまとめ時期は早める必要があり、検討したい。